このページはJavaScriptを使用しています。対応ブラウザでご覧下さい。 東京大学法科大学院ローレビュー
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Vol.1 (2006.8)

>創刊の辞 (高橋宏志研究科長)

>編集方針について (編集委員会)

>実務家教員寄稿論文(PDF形式)

学生・修了生投稿論文(PDF形式)

表紙・目次等(PDF形式)
 

  
創刊の辞

 専門職大学院である法科大学院が法曹としての基幹的能力を育成することを任務とすることはいうまでもないが,このことは法科大学院での法曹養成教育は,学生が既存の理論や実務に習熟できるようにすることに尽きるということを意味するものではない。むしろ,いまだ未解決であったり,これから新たに生ずるであろう社会的課題について,法曹として正面から取り組んで,解決を図っていくという創造的な能力の涵養こそが究極の法科大学院教育の目標でなければならないと東京大学法科大学院(正式名称は,東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻)では考えている。

 このような創造的な法曹としての能力の涵養のためには,特定の法的な問題について理論や実務のリサーチをし,それを踏まえて自分なりの解決策を模索して,その結果を論文等の文章に著していくという作業はきわめて有効であるということができる。このような観点から,本法科大学院では,創設された2004年度より米国のロースクールで刊行されているローレビューをモデルに,本法科大学院でも学生が主体的に編集を担当するローレビューを創刊しようという考え方のもとに準備作業を行ってきた。幸いにも,法科大学院第1期生の優秀な学生諸君が編集委員の仕事を引き受けてくれ,法科大学院創設2年度目に当たる2005年度夏期に編集委員会を発足させ,投稿を募集する作業に着手することができた。その後も,なにぶんにもはじめての試みであるだけに,試行錯誤の連続ではあったが,ここに「東京大学法科大学院ローレビュー」を創刊するものである。

 米国流のローレビューを指向するとすれば,本ローレビューは,本法科大学院の学生が投稿する論文等のみでなく,インターカレッジで第一線の法学研究者が投稿する査読制の定期刊行物となる。そのようなことが実現すれば,わが国の法学研究のあり方について革命的な事態をもたらすことになろう。研究科長としての立場でものをいえば,現時点では,本ローレビューにより,そこまでの野心的なことを考えているわけではない。上記のように,法科大学院の教育という観点から学生に論文等の発表の場を提供することが主眼であり,定着が確実なものとなるまでは冊子体の刊行物とせず,電子ジャーナル方式の刊行物として刊行するものとしている。しかし,本ローレビューには法科大学院教員の寄稿も可能であり,現に本号では実務家教員の寄稿が掲載されている。研究者教員の寄稿も次号以降ありうるであろう。そのような状況が生じた場合に本ローレビューがどのような刊行物としての意義をもつかは,学生を主体とする編集委員会が決めていくことになろう。

 いずれにせよ,ここに刊行される本ローレビューは東京大学法科大学院による法科大学院教育のためのユニークな試みである。これが多くの読者の目にとまり,有意義な試みとして評価されることを望んでいる。

2006年8月
東京大学大学院法学政治学研究科長
高橋宏志