第7巻の刊行にあたって

ここに東京大学法科大学院ローレビュー第7巻を世に送り出す。2006年に刊行が始まった本ローレビューは,本年,7冊目を刊行することができた。第7巻には,厳正な審査の結果選ばれた,学生諸君の投稿論文6編が掲載されている。いずれも力のこもった,水準の高い力作であり,これらの論文執筆者の努力に敬意を表するとともに,東京大学法科大学院の学生諸君が研究に対して強い関心を持ち,またそれを遂行する能力を実際に備えていることを,大変誇りに思う次第である。

未だ十分な解決の与えられていない問題について,学説におけるこれまでの検討内容・結果や関連する判例・裁判例,さらには,同様の問題に関する外国法の状況等を分析・検討し,一定の結論を説得力ある形で論じるということは,法曹養成教育という観点から見たときにも,極めて意義の高いことである。したがって,演習や授業において,特定の課題についてペイパーを作成することは重要なことであり,さらに,東京大学の法科大学院では,「リサーチペイパー」,さらには「研究論文」という科目を用意して,そうした教育の必要性に対応しようとしている。法科大学院の学生諸君も,そうした機会を利用して,リサーチ,研究活動に携わることが強く推奨される。法科大学院ローレビューは,そのような研究活動の成果を公表する場を提供して,研究に向けた学生諸君の努力を奨励・促進しようとするものである。

今回は,合計25編の論文が学生諸君から投稿された。このこと自体,大変喜ばしいことである。それを,教員の意見をも徴しつつ,学生が主体となって運営する編集委員会で厳正に審査し,その結果,掲載されることになったのが,収録されている合計6編の論文である。本ローレビューの刊行は,このような法科大学院の学生諸君の努力の積み重ねによって実現しているのであり,このこと自体,世の中に誇るべきことであると考えている。

なお,本巻には,学生諸君の投稿論文のほかに,東京大学法科大学院の教員により執筆された論文も,創刊号以来の各巻と同様,併せて掲載されている。今回は3編の論文を収録することができた。当初は,主として実務家教員による研究成果の公表の場として考えられていたようであるが,現在は,研究者教員にとっても重要な論文発表の場となっている。今後さらに充実した論文の掲載を期待したい。

本巻の刊行は,論文執筆者,編集委員による尽力の賜である。法学政治学研究科長として,関係者に対して感謝の意を表したい。

2012年8月
東京大学大学院法学政治学研究科長
山 口   厚