編集方針について(第1巻掲載)

本誌は,東京大学法科大学院(法学政治学研究科法曹養成専攻)の学生による研究成果の公表を主たる目的とする。法科大学院の学生は,普段の学習の中で,研究論文・リサーチペイパー・演習のレポート・授業の課題などを通じて,一定の問題意識の下に研究活動を行うことができる。そうした研究活動の成果のうち優れたものを社会に発信することは法科大学院の果たすべき役割として誠に重要であり,学生の側にとっても研究成果公表の場が用意されていることが良い動機付けとなるようにとの考え方により本誌は創刊された。

同時に,本誌は,東京大学法科大学院の教員,とりわけ実務家教員による研究成果の公表をも大きな目的とするものである。法科大学院で教鞭をとる実務家教員は,その深い実務経験を活かして,従来の研究者とはまた違った独自の観点から,問題意識を社会に発信することが期待されている。本誌はそうした活動の場としても大きな役割を果たそうとするものであり,創刊号においては,4 名の先生方の論稿を掲載させていただくこととなった。さらに,将来的には,内外の研究者教員の研究成果の公表をも視野に入れている。ただ,本誌が最終的にどのような刊行物として定着していくかは,今後に待つところが大きいと言えよう。

本誌の特徴は,何よりも,あらゆる点において学生主導で企画・運営されている点にある。そもそもの立ち上げ自体も,学生有志による自発的な提案に始まった。学生側が研究科に対して本誌立ち上げの意義・計画を説明し,その後も議論を重ねた上で,必要な業務を行う機関として編集委員会が設置されることとなり,準備作業が今日まで続けられた。

編集委員会は,学生委員と教員委員(初年度は専攻長・両副専攻長)とで構成されている。編集委員会では,学生委員が主体となって編集作業を遂行し,教員委員はこれに対して助言・監督をする。学生が遂行する編集作業は,投稿の募集,投稿規程の策定,応募原稿の掲載に関する予備審査,審査結果の通知,投稿論稿の校正,補正事項の検討,電子ジャーナルの紙面等の企画・作成,ウェブ・ページのデザイン,その他の編集作業全般にわたる。編集作業の中でも,中心となるのは掲載の可否を決するための予備審査(レビュー)であるが,この審査についても学生委員が主導してこれを行う。ただし,クオリティ・コントロールの目的から,掲載の決定には,教員委員またはその委嘱を受けた関係分野の教員の同意を要するものとされている。審査基準は多岐にわたるが,対象となる論稿が学問的に見て一定の新規性・創造性を有するかどうかに重点が置かれている。もっとも,本誌への投稿は法科大学院のカリキュラムに組み込まれたものではなく,通常のカリキュラムにおける学習を本分とする法科大学院学生にフルタイムの研究者と全く同水準のものを要求することもまた適切でない。したがって,実際の審査においても,この点が配慮されている。

今年度は,投稿期限を2005 年12 月末として,計25 本の論稿が投稿された( 投稿者27 名,共著論稿2本)。いずれも優秀な論稿ばかりで審査は難航し,繰り返し開かれる審査会議においては激しい議論が行なわれた。そうして選ばれたのが創刊号掲載の7本の学生による論稿である。

東京大学法科大学院ローレビュー編集委員会
学生編集委員   粟生香里
倉橋雄作
西澤健太郎
沼田知之
東 陽介
松井裕介
村上祐亮
教員編集委員   山下友信
山口 厚
両角吉晃