第8巻の刊行にあたって

2006年に創刊された東京大学法科大学院ローレビューは,本年,8冊目を刊行することができた。この第8巻には,厳正な審査の結果選ばれた,学生諸君の投稿論文5編が掲載されている。いずれも力のこもった,水準の高い力作であり,これらの論文執筆者の努力に敬意を表したい。また,東京大学法科大学院の学生諸君が研究に対して強い関心を持ち,またそれを遂行する能力を実際に備えていることを,誇らしく感じている次第である。

十分な解決が与えられていない法的問題について,これまでの検討内容・結果や関連する判例・裁判例,さらには,同様の問題に関する外国法の状況等を分析・検討し,到達した一定の結論を説得力ある形で提示するということは,法曹養成教育という観点から見たときにも,極めて意義深いことである。したがって,東京大学の法科大学院では,「リサーチペイパー」,さらには「研究論文」という科目を用意して,そうした教育上の必要性・重要性に対応している。法科大学院の学生諸君には,さまざまな機会を利用して,リサーチ,研究活動に携わることを推奨したい。法科大学院ローレビューは,そのような研究活動の成果を公表する場を提供して,研究に向けた学生諸君の努力を奨励・促進しようとするものである。

今回は,合計25編に及ぶ多数の論文が学生諸君から投稿された。学生が主体となって運営する編集委員会がそれらを厳正に審査し,その結果,掲載されることになったのが,収録されている合計5編の論文である。本ローレビューは,このような法科大学院の学生諸君の努力の積み重ねによって刊行されていることを改めて強調したい。

なお,本巻には,学生諸君の投稿論文のほかに,東京大学法科大学院の教員により執筆された論文も,創刊号以来の各巻と同様,併せて掲載されている。今回は3編の論文を収録している。当初,本ローレビューは,主として実務家教員による研究成果の公表の場として考えられていたようであるが,現在は,研究者教員にとっても重要な論文発表の場となっている。今後さらに充実した論文の掲載を期待したい。

本巻の刊行は,論文執筆者,そして編集委員による努力の成果である。法学政治学研究科長として,関係者に感謝の意を表し,ここに,東京大学法科大学院ローレビュー第8巻を世に送り出すものである。

2013年8月
東京大学大学院法学政治学研究科長
山 口   厚