第12巻の刊行にあたって

東京大学法科大学院ローレビュー第12巻が刊行の運びとなった。昨年、第11巻の刊行によって、本誌は新たな10年へ向けての新たな1歩を踏み出すことになったが、第12巻が順調に刊行されたことは大変喜ばしい。

本誌は、2004年に創設された東京大学の法科大学院は「創造的な能力の涵養こそが究極の法科大学院教育の目標でなければならない」という考えの下で、そうした「能力の涵養のためには、特定の法的な問題について理論や実務のリサーチをし、それを踏まえて自分なりの解決策を模索して、その結果を論文等の文章に著していくという作業はきわめて有効である」(括弧内の引用は、本誌第1巻の高橋宏志研究科長(当時)の「創刊の辞」より)という観点から創刊された。

本誌の編集に当たるのは法科大学院の学生諸君であり、幸いにも毎年優秀な学生諸君が大変手間のかかる作業であることも厭わず編集に従事し、毎年刊行を実現している。本巻についても同様であり、今年度の編集委員を務めてくれた学生諸君に心からの謝意を表したい。

本誌は、本法科大学院の教員から寄せられた論稿に加えて、法科大学院生が投稿してきた原稿の中から、教員のレフェリーと学生の編集委員会による厳正な審査によって厳選された論文を掲載しており、高い評価を得ている。とくに学生の執筆した論文で本誌に掲載されたものは、相当高度で本格的である。その意味では、先に引用した本誌創刊の目的は十分に達せられているといってよい。

本巻でも、上記の編集の方針は維持されている。法科大学院学生の投稿は例年よりも多かった昨年と同様、16編であった。そのうちから厳選された2編が本巻に掲載されている。昨年よりも掲載数が減ったことはやや残念ではあるが、これも厳正な評価がなされていることの証左といえよう。現役の学生諸君は、この採択結果にひるむことなく、ぜひ積極的に投稿をして欲しい。先に引用した高橋・元研究科長の創刊の辞にあるように、論文の執筆は、法律家としての能力の向上に必ず寄与するからである。また多くの学生諸君からの投稿があるということは、とりもなおさず、「創造的な能力の涵養」という本法科大学院の目標に沿った学生諸君の勉学が行われていることの証でもあるからである。さらには、多くの投稿の中から厳選された論稿が掲載されることが、本誌の評価をより一層高めるからでもある。

本研究科としては、引き続き、本誌の刊行について、可能な限りのサポートをしていくつもりである。皆様にも、これまで以上のご支援をお願いしたい。

2017年9月
東京大学大学院法学政治学研究科長
岩 村 正 彦